『生きる 描く 愛する』 新聞書評
●2006年4月30日 福島民友新聞 絵を心に蓄えた気持ちに
絵を鑑賞する手引というより、絵を深く知るための手引だ。
苦闘から逃げず信念を貫いた生き方が一枚の絵とともに描き出される画家の肖像といっていい。
登場する画家は四十二人。読売新聞美術記者だった著者は作品の解説だけでなく、
人となりを象徴する作品誕生のきっかけをつくった出会いなどを画家自身の言葉をまじえて紹介、
絵の見方を膨らませる読み物になった。
例えば表紙を飾った小倉遊亀の「径」。若い母親をまねながら歩く女の子、犬が列をつくるほほ
笑ましい作品だが、中国を旅したときに見た石仏に不思議な感動を受けたのが動機と小倉は言っ
ている。
奥村土牛、東山魁夷、梅原龍三郎、安井曾太郎、小林古径、上村松園、三岸節子、若くして亡
くなった佐伯祐三、松本俊介ら独自の絵の世界を創造した個性をいとおしむ語り口は、著者が言
うように心に絵を蓄えた気分にさせる。(阿部光宏)
●2006年5月7日(日)毎日新聞
昨年亡くなった美術評論家・作家の田中穣さんが、近現代の日本の著名画家42人の人となり
や作品にまつわる話を書いた『生きる描く愛する』が、婦人之友社から出版された。名画家の
代表作品1点ずつをカラーで掲載している。
福田平八郎の傑作「雨」を紹介して、「人生のこと、何であれ、物事に対する凝視から道はひら
ける」と説く。林武の創作過程はボクシングのパンチにたとえた。パリの街角を描いた荻須高徳
を「パリのお上りさんの目を持ちつづけた」とした分析もユニークだ。
●2006年5月18日(木)新文化
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