新シリーズ【わたしとお金】「お金って不公平だと思いませんか?」前編 | 婦人之友社 さあ、生活を発見しよう

新シリーズ【わたしとお金】「お金って不公平だと思いませんか?」前編

 

家計簿、節約、貯金、給与……。

私たちが「家計管理をしなくっちゃ」と、考えたとき、思い浮かぶことは人それぞれです。

このシリーズでは、【お金】について「私はこう考える」という、人生の軸となるものをききながら、読み手が自分の考えを整理できるよう、登場する方に質問を投げかけていきます。

 

 聞き手:婦人之友社

 



今回の質問

「お金って不公平だと思いませんか?」前編

<前後編で2回のお届けになります>

 

ーー 第1回目は家計簿歴45年の山﨑美津江さんです。ふだんは家の中の「整理、収納、掃除」を中心に、生活を哲学しながら、雑誌や書籍でアドバイスをしています。そんな山﨑さんに、今日は「お金」について聞かせていただきたいと思います。

 

山﨑 「お金」って、人間にとって永遠のテーマですよね。良くも悪くも「力」があるのがお金。

 私自身、学生結婚をして今日のガス代が払えないようなヒリヒリとした時代を過ごし、夫の転職やら自分の欲とのせめぎ合いやらで、失敗もつまづきもたくさん経験してきました。学者でも専門家でもありませんが「お金」に悩む人のために、全力でお答えしますね。

 

ーー まず「お金って不公平だと思いませんか?」ということについて聞かせてください。

 

山﨑 難易度の高い質問からきましたね(笑)でも、とても重要な視点ですね。

 

ーー みんながなんとなく抱えているモヤモヤっとした部分なので、そこから派生して「どうせわが家は……」と思ったり「考えても仕方がない」という思考になってしまう。

 

山﨑 そのあたり、一度、頭と気持ちの整理をしてみると、お金のことを考える理由がはっきりして、すっきりした気持ちで向き合えるかもしれないですね。

 

ーー 答えの出ない質問かもしれませんが、山﨑さんといっしょにこの問いに体当たりさせてください!

 

山﨑 がんばりましょう!

 

 

ーー私たちはふだん、労働を中心とするさまざまな形の「収入」をもとに、生計を立てています。でもその「収入」は、多い人もいれば、少ない人もいます。多い人はゆとりのある生活を不安なくできて、少ない人は、キリキリと節約しながら生きていくしかない。そんな風に思ってしまうのは心が狭いですか?

 

山﨑 「公平か不公平か」と聞かれたらおそらく「不公平」なんです。身もふたもない答えですね(笑)。

 

ーー ああ、やっぱり不公平なんですね……。

 

山﨑 例えば時間だったら、だれにでも同じように24時間があります。家族の多い人は26時間、仕事をよくする人、よく寝る人は30時間なんてことはないんです。でもお金は多い人も、少ない人もいる。だから最初の答えとしては「不公平」なんです。でもそれはある一面から見た場合のことなので、落ち込む必要はないです。

 

ーー かなり後ろ向きになりましたが、そうでもないんですか?

 

山﨑 お金って受け止め方がとても個人的なものよ。

 

ーー 「個性」ほどちがいますか?

 

山﨑 そう「個性」。もって生まれた部分もあれば、育ってきた環境や人との関わりの中で形成される部分でもあるので、全員ちがうと思います。「想像もできないほどお金がたくさんあって、まったく困っていないように見える人でもお金の不安に押しつぶされて幸せを感じられないという人もいますよね。一方、収入はそれほど多くないのに、自分のことも人のことも大切にして、心豊かに暮らしている人がいる」というのも事実なんですよ。「お金があっても不安な人、なくても心豊かな人」ということ。

 

ーー 幸せが、感じられる自分かどうか……

 

山﨑 でも「お金」について人のことを観察するのはそのていどでいいんです。結局は「自分はどうか」ということがだいじ。心の持ち方の面からみると「お金のことは不公平なようで、公平にもなる」ということです。

 

ーー 不公平だけど、自分次第で公平にもできる。

 

山﨑 いちばんやっかいなのが「お金のことがわからないから、どんどん不安になって、幸せを感じられない」というサイクルに入ってしまった場合。これでは「お金は不公平」と思い込んだまま抜けられなくなってしまうんです。お金のことでひどく不安になると、家庭内がギズギスしたり、人間関係をこわしたり、極端なことをいえば今の社会経済の中では精神的に追いつめられていってしまうんですよね。

 

 

ーー それが、はじめに言っていた「お金には良くも悪くも、力がある」ということーー

 

山﨑 私はどちらかというと、ピンチになったときに、自分がお金の怖い部分に引き込まれないために、今日の数字をあいまいにしておきたくないという気持ちがあるんですよ。

 子どものころ商売をしていた家で育ったので、良いときは富があふれていたけれど、資金繰りが途絶えた途端、家財が一切合切持っていかれたという経験をしているからかもしれないんですけれどね。

 

ーー 子どもからみる、家計の風景はどんな家庭であっても、心の奥に根づいていくものですよね。

 

山﨑 みんな潜在的にはお金というものを大きく評価しているから、そこにふりまわされてしまうこともあるんですよ。だから向き合わないというのはちょっと不誠実なことになりかねない。

 

ーー お金のことは不安だけれど、今日の生活はなんとかなっている。だからこの先もなるようになるかなと、向き合っていない自分を肯定してやり過ごしている人も多いと思うんです。

 

山﨑 今の社会は、そういう雰囲気がありますよね。でも「7人に一人の子どもが貧困」と言われている中で、本当は逃げてはいられない問題なんですよ。お金に誠実でいないと、何かあったときに、自分を保てなくなってしまうのが人間です。

 

ーー そういう人が、お金の「力」に誘惑されないで生きていくためにはどうしたらいいんですか?

 

山﨑 できるだけラクで、自分にあった方法で「お金の見える化」をしていくことを、声を大にしてオススメしています。「わが家的にどうなのか」ということを真剣に! 自分で向き合わずしてお金のことは解決はしません。ここはちょっと厳しく言います(笑)。

 

ーー はい、なんとかついていきたいです。そしてそろそろ「家計管理」の話が出てきそうですね。

 

山﨑 そうです、そうです(笑)。ここからがカリキュラムでいえば実技。

 

 

ーー お金のことを考えて不安になるのは、子どもの教育費、住宅費用、老後資金などですが、数字で見ると、数百万、数千万円と、クラクラしそうな金額じゃないですか。

 

山﨑 そんな多額のお金を見たこともない私たちですから、不安がむくむくと広がりますよね。でも、もしかしたら大きな不安を自分で呼び込んでいるということもあるんだけど、そこは大丈夫?

 だって今現在、収入の範囲内で暮らせていないのに、または暮らせているかいないかわからないのに、とつぜん大きなお金のことを考えるのには無理がある。

 

ーー 見たこともないので、数字の上でどうなっているのかと考えるだけで、もう頭がいっぱいです。「▷*$?#><」ーー。そして家計の達人や数字に強い人のように私はできない、、、と思ってしまうのです。

 

山﨑 でしょ。だからお金の整理にも順番があるということ。どこからでもいいんだけど、お金のことが苦手な人は、金額の小さいところ、自分の手の届く範囲のことからはじめるのがだいじ。

 

ーー 順番があるんですね! 

 

山﨑 その上で、だれでもいますぐできることが、あるんですよ。

 

ーー なんですか?

 

山﨑 それは「現状を知る」こと。ふつうだなって思ったでしょ? 

 

ーー はい。正直に言えば。。。

 

山﨑 でもこれが大正解なんです。「こんな簡単で」「たったこれだけで」お金の管理ができますよということを披露して、鮮やかに問題を解決してみせたら読者も大よろびかもしれないけれど、長期的に見て、本気でわが家の家計を整えたいと思う人たちには、自分の手と頭を動かした方法しかないんです。

 ただ、私たちが長い間家計簿をつけてきた中で、時代はどんどん変わっていて、比べものにならないほどラクに、短時間で家計管理ができるようになってきたのは確か。かつての同じ苦労をこれからの人がする必要は全然なくて、次のステージからスタートできることがいっぱいあるので、どんどん吸収していってほしいなと思います。

 

ーー 先輩の知恵を、存分に使わせてもらいたいです!

 

山﨑 話をもどして「わが家の現状」を知るためには、大雑把にいえば去年の12月31日の通帳の残高と、今年の12月末を比べてみて、プラスかマイナスか。マイナスなら支出の見直しを含めた対策をして、プラスならどのくらい貯蓄ができていて、この先どうなっていくのかをシミュレーションしていきます。

 

ーー それならできるかも。。。全体の収支は通帳の残高でわかったとして、次に何をしていけばいいですか? 

 

山﨑 何にいくら使っているかを知ることです。

 

 

ーー ここで家計簿登場!?

 

山﨑 そう! 私は長年『羽仁もと子案家計簿』を使ってきましたが、今はスマホやタブレット、パソコンで入力のできる<kakei+(カケイプラス )>を使っています。入力していくだけで、いつ、何に使ったかがわかり、収支との見比べもできるんです。

 

ーー 現状を知るから対策のポイントが見えるということですね。逆に現状を知らないから不安だけが大きくなっていく。

 

山﨑 わが家の家計を把握する=「見える化」すること。そのための道具となる「家計簿」は色々なパターンがあるので、自分に合ったものを選んでみることがだいじです。私に合うのはどれだろうーって楽しい気分でね。

 

ーー 山﨑さんに言われると、やる気が出てきます。

 

山﨑 でもここで「はじめるか」「はじめないか」は、1年後に、いや3カ月後、早ければ来月には大きな差が出るんですよ。これは45年家計簿と共に経験してきたから断言します!

 

<後編に続きます→>

 

次回は、「家庭内にあるお金の不公平感が、家族関係を複雑にしてしまっている」件について。山﨑さんの結婚当初の波乱の生活のことも聞きました。お楽しみに。

 

ヤマサキミツエ
相模友の会会員。家計簿歴45年余。長女の出産から40年余、友の会で整理、収納、そうじの技術を磨き20年ほど前から自宅のオープンハウスをはじめる。講演、TV、雑誌でも人気、2LDKのマンションで夫とふたり暮らし。著書『帰りたくなる家』(小社刊)は世代を問わず人気の1冊。

 

 


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