里山が教えてくれた、心地のいい家づくり

[モノと暮らしのストーリー・加賀江広宣さん 01]

 

鹿児島市の中心から少し離れた里山で、妻と3人のお子さんと一緒に暮らす加賀江さん。Instagramで発信されるその暮らしからは、都会の生活ではなかなか味わえない豊かな時間が伝わってきます。

土地との出会いから家づくり、そして日々の暮らしや子育てなど、地域や自然とのつながりを通して感じたこと、変わったことなどをたっぷり伺いました。

(文・赤木 真弓/写真・加賀江 広宣)

 


 

里山が教えてくれた、心地のいい家づくり

加賀江広宣さん(住むということ探究人)

 

(写真・小野 慶輔)

 

高校から大学院までインテリアや建築を学び、現在は住宅会社に勤務する加賀江さん。家を建てると決めたのは、鹿児島の中心部まで車で35分ほどのクヌギ林でした。

 

「最初はインターネットで見つけた場所でした。休みの日に家族で出かけるついでに寄ってみたところ、夫婦ともに周りの環境や雰囲気を気に入りました。北側の眺望が開けていて、遠くに山並みが見え、手前には里山の風景があって。春先でちょうど田んぼにレンゲが咲き始めたくらい。その景色がすごくいいなと思ったんです。そのときは土地の中には入れませんでしたが、クヌギ林の周りを歩いてみると気持ちが良くて。このクヌギを庭に残して、そのまま活かせるのではないかと思いました」

 

住宅の仕事をするなかで、かつては性能や動線、設備、間取り、デザインなどを考えて、いい家を作ろうと思っていたという加賀江さん。移住と転職のきっかけになった「鹿児島の家」で、窓から見える風景の大切さに気づいたといいます。

 

「住宅の設計や建築の考え方は人によって違うと思うのですが、私の場合8割はどういう土地に建てるかによって、どういう設計をするかが決まると思っています。建物は土地や環境と切り離せないんですよね。例えばビルに挟まれた土地に家を建てるのと、わが家のような場所に家を建てるのでは、まったく異なる設計になることはなんとなく想像できると思います。その土地にある心地よさにつながるメリットは活かし、デメリットは感じさせないようにするのが基本。この場所はいい気持ちになれる要素がたくさんあり、家を建てる場所としてすごくいいなと思いました。

 

 

家の設計をするときに最初に決めたのは、北側の眺望と南側のクヌギの木を活かすこと。だから北と南に庭を作りました。クヌギの木は冬になると葉が落ち、夏は茂ります。南にクヌギがたくさんあると、夏場の日差しを遮り木陰からのそよ風を導いてくれて、冬は葉が落ちて日がたくさん入ります。そんなことを最初に決めてから、そのために間取りをどう作ればいいかを考えました。自然の環境を活かすことが最優先だったんです」

 

3人のお子さんがいる加賀江さんですが、こだわったのは「夫婦2人の家」だそう。

「家は夫婦2人のために作るものだと、今でも思っています。夫婦2人になったときに広すぎたり、使わない場所がないようにしたい。子ども部屋を子どもの数だけ作ると、子どもが巣立った後に使わなくなり広すぎる家になってしまうので、できるだけコンパクトに。ちゃんと将来の使い道をイメージをしながら、子どもたちのスペースも考えました。土地を見たときから、老後に夫婦2人で窓辺に座って里山の風景を眺めているイメージが最初に浮かんでいたんです」

 

(2025.01.24)

 


 

加賀江広宣さんのおすすめ品が、F-TOMO SHOP 内「暮らしの達人セレクション」でお求めいただけます。

ぜひご覧ください。

 

次回からは、インタビューと併せて愛用品についても伺います。

     

    —————————————

    加賀江広宣 かがえひろのぶ

    1980年長崎市生まれ。高校でインテリアを学んだ後、九州産業大学建築学科、同大学院建築学専攻修士課程修了。ゼネコンの施工管理、住宅会社の営業を経て、2010年株式会社シンケンに入社。2013年、鹿児島市中心街から少し離れた里山に家を建て、太陽、風、木々のにおいを感じる暮らしを楽しみながら、Instagramで発信する。妻、長男、長女、次女との5人暮らし。

    2023年12月7日に著書『住む、ということ 里山のちいさな暮らし』を、婦人之友社より発売。

    【Instagram】@kagae_hironobu


    2023年12月7日発売

    『住む、ということ』

    1,760円(税込) 詳細⇒