おおらかになれる、里山での暮らし
[モノと暮らしのストーリー・加賀江広宣さん 04]
鹿児島市の中心から少し離れた里山で、妻と3人のお子さんと一緒に暮らす加賀江さん。Instagramで発信されるその暮らしからは、都会の生活ではなかなか味わえない豊かな時間が伝わってきます。
土地との出会いから家づくり、そして日々の暮らしや子育てなど、地域や自然とのつながりを通して感じたこと、変わったことなどをたっぷり伺いました。
(文・赤木 真弓/写真・加賀江 広宣)
おおらかになれる、里山での暮らし
加賀江広宣さん(住むということ探究人)
インドア派で虫も苦手だったという加賀江さんですが、里山暮らしの魅力とは?
「虫は今でも怖いですが慣れました。気持ちのいいことがそれを遥かに越えて、お釣りがくるくらい。自然は思うようにならないことばかりで、おおらかじゃないと生きていけないんですよね。なんでも思うようにしようとすると、疲れてしまいます。そんなに丁寧にいろいろなことをできないので、これくらいでいいんじゃないかと思わないと、過ごせない場所ではあります。人に対しても同じで、美しい自然の近くで暮らし、季節の移り変わりや1日の光の変化を感じていると、心にもゆとりができると思います」
今は、里山という環境を存分に味わうことができるハナレ「点」を準備中だそう。
「特に目的はなく、もともとハナレが欲しいと思っていたんです。実際に作ったのは、 Instagramで発信していく中で、今まで繋がれなかった人と繋がる機会がすごく増えたから。自分から外に出て行って人と接する機会を作るのは得意ではないのですが、家に来てもらって迎えるのは楽しくできる。家や里山暮らしに対して同じ想いを持っている方が来てくれるので、家が会話の助けになってくれるんですよね。そういう機会を持つことで、人との縁が人生を豊かにしてくれると感じるようになって、それを実践するために「住むように泊まれる」場所を作ろうと思いました。
昔は日本のどこにでもあったような里山ですが、いまは忘れられ、その良さを感じる機会がなくなっていると思うんです。自然を大切にすることを、頭で考えるのではなく体感として受け取ってもらえるといいなと思って。春くらいから、このハナレを小さな宿として開業できたらと思い、それに向けて準備をしているところです」
今回ご紹介する加賀江さんの愛用品はこちら。
LAMY サファリ ブラック 万年筆 M L17-M
(以下、加賀江さんコメント)
ドイツ「LAMY」の万年筆は、この本を作る際、デザイナーさんから各章のタイトルを手書きにするというアイデアをいただいて購入したもの。さらっと気兼ねなく支えて、ペンケースに入れておけるようなものがいいなと思って選びました。それ以来仕事で文字を書くときに使っていますが、緊張せずに使えるし、以前使っていたインクを注入するタイプのものより、カートリッジ式なので簡単で扱いやすいです。濃い青のインクのほか、黒いインクのものの2本愛用しています。普段から手書きする機会が多く、読書するときにも印象的な言葉は「モレスキン」のノートに書いていて、会社で提出する書類や人に手紙を書くときなど、人にお見せするときに万年筆を使っています。万年筆はボールペンと違って線に濃淡があり、書き文字から伝わるものがあるところがいいなと思っています。
(2025.02.05)
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加賀江広宣 かがえひろのぶ
1980年長崎市生まれ。高校でインテリアを学んだ後、九州産業大学建築学科、同大学院建築学専攻修士課程修了。ゼネコンの施工管理、住宅会社の営業を経て、2010年株式会社シンケンに入社。2013年、鹿児島市中心街から少し離れた里山に家を建て、太陽、風、木々のにおいを感じる暮らしを楽しみながら、Instagramで発信する。妻、長男、長女、次女との5人暮らし。
2023年12月7日に著書『住む、ということ 里山のちいさな暮らし』を、婦人之友社より発売。
【Instagram】@kagae_hironobu