超長寿時代、「ヨタヘロ期」がやってくる<明日の友 冬 243号 座談会抄録>

  座談会  

超長寿時代、「ヨタヘロ期」がやってくる

シニアの健康生活雑誌『明日の友』の樋口恵子さんの連載「人生百年学のすすめ」をまとめた『老~い、どん! あなたにもヨタヘロ期がやってくる』が2019年12月10日に発売となりました。
この機に、長寿社会の研究と変革に長く携わる旧知のお三方が、健康寿命と平均寿命の間にある困難な時期=「ヨタヨタ・ヘロヘロ期」への心構えや、社会に求められること等を熱くトーク。最後に「介護保険の後退を絶対に許さない!院内集会」(2020年1月14日)の企画も発動となりました。
記事の一部をご紹介します。

 

明日の友
冬 243号

左から上野千鶴子さん(71)、樋口恵子さん(87)、春日キスヨさん(76)。(10月6日、婦人之友社中庭)

 

樋口恵子(ひぐちけいこ)
1932年東京生まれ。東京大学文学部卒業。40代から女性問題、福祉、教育などの分野で評論家として活躍。東京家政大学教授、厚労省社会保障審議会委員などを歴任。現男女共同参画推進連携会議メンバー。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。東京家政大学名誉教授、同大学女性未来研究所所長。婦人之友社のシニア誌『明日の友』にて「人生100年学のすすめ」好評連載中。

春日キスヨ(かすがきすよ)
1943年熊本県生まれ。九州大学大学院教育学博士課程中途退学。元松山大学人文学部社会学科教授。専門は社会学・福祉学。不登校、ひきこもり、障害者・高齢者介護などについて、現場の支援者と協働し、研究を続ける。著書に『変わる家族と介護』『百まで生きる覚悟 超長寿時代の「身じまい」の作法 』など多数。

上野千鶴子(うえのちづこ)
1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。2011年まで東京大学大学院人文社会系研究科教授。現名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門の女性学、ジェンダーに加え、高齢者の介護とケアも研究テーマとしている。著書に 『おひとりさまの最期』『上野千鶴子のサバイバル語録』 など多数。

写真…佐藤克秋

 

「老~い、どん!」の号砲は鳴って

樋口 『明日の友』で2年半ほど続けている連載を、1冊にまとめることになりました。婦人之友社は真面目だからきっとお堅いタイトルをつけるだろうと思っていたら、あきれたことに『老~い、どん!』ですって(笑)。これはいいと思ったんです。
春日 とてもいいタイトルですね。
樋口 そこで今日は、春日さん上野さんという恐るべき妹たちのご助力を得て、ヨタヘロ期について話し合い、『老~い、どん!』の出版を飾らせていただきたいと思っています。
上野 早速読ませていただいたのですが、びっくりするほどご自身のことを書いてらっしゃいますね。体調の変化、家の建て替え、在宅派へのシフト。すいぶん正直に書かれるんだなと思いました。
樋口 だって本当なんですもの。
上野 それはそうだけど、これまで樋口さんは「評論家として自分のことはそんなに話さない」っておっしゃって。
樋口 私についてはあまり書きませんでしたからね。
上野 だから、今回はずいぶん「私語(わたしがた)り」が多いなというのが感想でした。
樋口 つまり、老いていくのは私であって、他人ではないのです。ところで最近、非常に評判になっているエッセイが2つあってね。ええと、誰だっけ……。
上野 こうやって名前が出なくなる(笑)。
樋口 これが、老いの現実です(笑)。
春日 そうなんですよねえ。
樋口 ひとつは忘れましたが、もうひとつは集団疎開仲間の黒井千次さん。新聞に自分の体の愚痴ばかり書いていますがこちらも同じなんです。体の衰えについては、私もしっかり書いておこうと思っています。
春日 高齢者の方に話を聞いていると「これは老いの兆候なのか、病気なのかがわからなくて苦しい」と言われる方が結構多い。だから、老いが体にどのような変調をきたすのかわかっておけば、気に病むことが少なくなるんじゃないかと思うんです。そこを書いてもらえるのは後に続く者として助かります。
樋口 年をとるといろいろなことが面倒になり、億劫になってきます。本にも書きましたが『明日の友』が「80歳前後は調理定年?」という特集を組んだとき、私の世代の主婦は「料理が嫌になっていいんだ」とホッとしたみたい。
(中略)

 

 

ヨタヘロ期と向き合わない元気高齢者たち

春日 自分と同世代の元気な女性たちは、倒れた後、どうするかについてを考えようとしない人があまりにも多いんですよ。みんな口を揃えて「ぎりぎりまで在宅で。やっていけなくなったら施設へ」と言われます。しかし「ぎりぎりになったとき自分で意思決定できますか?」と問い詰めると「そんな暗いことは考えたくない」「なりゆきまかせ」。という答えが返ってくる。
上野 私みたいなおひとりさまは、もっと早くから考えていますよ。
春日 そうです。シングルで生きてきた人には考えている人が多い。でも、子どもがいて小金持ちの人が困る。70代の人は今を楽しみたい。80代になると疲れて取り組む気力がない。で、結局子どもに丸投げするんです。これにはびっくりしました。
一同 (苦笑)
(中略)

 

介護保険の改正は、女を直撃する

春日 私が樋口さんにお聞きしたいのは、要介護1、2までを地域支援事業にしようとしている介護保険制度についてです。
樋口 そうそう。あれはまたお国とケンカしなきゃなりませんね(笑)。
上野 生活援助はずしも大問題ですよ。自己負担も3割になる。現場の声を聞いていると、2015年に一定以上の所得の人が2割負担になったときから、明らかに利用抑制が起きています。
春日 要介護2まではずすなんて、とんでもないですよね。軽度の認知症の人が以前よりは地域で暮らしやすくなっているのが、不可能になっていきます。
樋口 介護保険の問題は、早急に声を上げなければなりません。だって、女を直撃するもの。
春日 このままいけばますます樋口さんが言われるファミレス社会(ファミリー・レス社会)になって、家族の介護能力もなくなっていきます。だからこそ、制度をどう充実させるかという議論へつなげないと。
上野 その通りです。やっとの思いでつくった制度の後退は絶対ゆるさない。
樋口 こうなったら、みんなで討ち入りシンポジウムをいたしましょう。国会前でプラカードを持って演説するのもいいわね!

 

全文は『明日の友』冬 243号に掲載しています。

明日の友 243号 冬
730円(税込)

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老~い、どん!
あなたにも「ヨタヘロ期」がやってくる
樋口恵子著
1,485円(税込)

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みんなで討ち入りシンポジウム【介護保険の後退を絶対に許さない!院内集会】
2020年1月14日 衆議院第一議員会館地下1階大会議室 mail: action@g-care.org

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