老いとは何かを伝えたい
長く、中高年向け雑誌「明日の友」顧問をつとめた新福尚武氏が、自身の老いを見つめ、よく老いたいと願う人々に贈る励ましの1冊。老年期に起こりやすい症状の実例とアドバイス。
著者紹介
1914年 鹿児島市生まれ、九州大学医学部卒業後、精神医学専攻。1956年 鳥取大学医学部教授、東京慈恵会医科大学教授を経て、1979年退職。
精神療法精神病理学会長、心身医学会長、アルコール医学会長、国際老年精神医学会名誉会長など歴任。
主な著書
『さわやかに老いる知恵』(婦人之友社)、『新精神医学』(医学出版社)、『ミドルエイジ・シンドローム』(朝日出版社)、『人類とぼけ』(講談社)、編者『精神医学大事典』(講談社)、『老年精神医学』(中山書店)、ほか多数。
目次
はじめに
老いを知るために
- 第一章 暗くなりがちな老いのイメージ
「老い」を正しくとらえること
老いについての五つの問題点
若・壮・老=多元的文化の存在する社会を
六五歳になればみな老人?
「正常」ということばの意味するもの - 第二章 老いを迎える人々に 心身両面における心がけ
「今」から始める慢性病予防
生活の変化を受け入れる心の準備を
謙虚さと素直さを忘れずに - 第三章 精神的長寿者たちの生き方に学ぶ
のびる寿命
傑出した超高齢者の姿 B・ラッセルと鈴木大拙
画家に精神的長寿者が多いのは?
精神的長寿の秘訣 - 第四章 百歳老人の調査報告から
元気な老人には共通的な基本条件がある
女性は長生き、でもその健康度は?
精神機能に急変化はない
性格と長寿の重要な関係
正常老化の百歳老人の脳は?
老いにそなえて ぼけ研究の最前線をみる
- 第五章 年をとると脳にどんな変化が起こり、ぼけるとさらにどんな変化が加わるか
「ぼけ」の研究に関心をもとう!
正常な老人の脳に起こる変化
ぼけた老人の脳にみられる病変 脳萎縮・原線維変化・老人斑
脳の神経伝達物質についての研究
脳の画像検査法の発展
からだでとらえられるぼけの標徴 生物学的マーカーによる早期診断の試み
「ぼけ」その原因はいろいろ 脳血管障害・アルツハイマー型痴呆ほか
「ぼけ」とは何か その精神生理学的理解
ぼけを治す薬(抗痴呆薬)とされるもの - 第六章 正常老化とぼけとの症状からみた違いと、女性におけるぼけ問題の複雑性
正常老化とぼけはどこが違うか
正常老化とぼけの接近
老化とぼけの混合状態
症状と脳変化の関係
女性は本当にぼけやすいのか? - 第七章 老人に起こりやすいぼけ以外の精神障害
うつ病・うつ状態
妄想状態
心身症
ノイローゼ(神経症) 「甘え」・からだの不安・不眠・強迫観念
生活を健康に! - 第八章 老年期に起こりやすい症状への対応 実例とアドバイス
第一例 空虚感に悩んだ五二歳の女性が回復した体験の記録
第二例 八六歳でうつ病、「ぼけ」のようになったが、治療で回復した女性の記録
第三例 七年間ひとり暮らしの七一歳の女性に生じた妄想性障害
第四例 七三歳のとき転んで脳梗塞が見つかった女性、その後の経過
第五例 六〇歳でアルツハイマー型痴呆を発症した男性の九年間にわたる看取りの記録
第六例 七九歳で異食症から始まった女性、七年間の看取りの記録
老いのあり方
- 第九章 老いの目ざめと生きがい
「一日」にいのちの価値をみて
「老いの目ざめ」とは?
目ざめの成立
老いの風光
老いの生きがい - 第十章 老いと死の作法
健やかに老い、健やかに老いを生きる
自立の限界の自覚と素直な依存
健やかな死 - 第十一章 老いの文化の確立を
高齢化社会の現実の中で
若さの文化と老いの文化
老いの文化に向かって