『メスとパレットⅣ』刊行にあたり 第2回
『メスとパレット』の著者 森 武生を師とあおぐ、岩崎 善毅(よしあき) 先生(都立駒込病院胃外科部長)との、世界旅の思い出の3回シリーズの第2回目。
岩崎 : 先生、春の叙勲・瑞宝小綬章おめでとうございます。
森 : どうも、どうも。
岩崎 : ところで、海外の学会に引っ張り出してくれたのも先生ですし、おかげで、世界に目が行くようになりました。もちろん勉強はして行くんですが、くわしい歴史はその場に立って、直に先生が教えてくれると、自然、興味が増したものです。この本、『メスとパレット』の旅日記にも、詳しいなあ、と感心するところが、いくつもありますよ。
森 : ところで、ピアノ上達している?
岩崎 : ひどいなあ、先生のアドバイスで続けてますよ。でも、気にかけてくれて嬉しいなあ。学生時代は、ピアノで飯を喰おうと思ったくらいだったけど、外科医になって諦めかけた。そのとき森先生から、絶対につづけろ、医学の専門バカになってはいけないと、強く言われまして。
森 : そうだよ、海外の学会が終わった後のパーティーで、向こうの人は、歌やピアノ、バイオリンをプロはだしに出来るわけだよ、日本人もそうならなくちゃ。
東ドイツでの学会後のパーティーで時間があって、スケッチを描いていたら、主催者が見つけて、その絵がみんなの中をぐるぐる回って、会場中が急に、うわっとなってね。
岩崎 : 先生の絵は、海外でも皆が憧れていますよ。その場の空気や音が伝わってくる絵なんです。不思議だなあ。
そういえば、ロスアンゼルス大学の80歳の教授もドラムを叩いているし、僕にも来週は私の家に150人集まるから来いと。日本から来週なんて来られませんよ、と言ったら、毎年呼んでくれる。ジャズピアノとドラムで、気持が通じあった。医学の専門バカになってはいけないという先生のアドバイス、感謝してます。
森 : 仕事は出来て当たり前。誰にでも何かはあるさ、好きで続けられるものが。
岩崎 : たまたま、僕はピアノが、外科医にプラスに働いたんですね。
森 : かなりね。学生時代に何かするにしても、お遊びじゃだめだよ。本気になってやらないと、だめだね。医学以外に続けられるものがあると、人間に幅が出来て、人生も豊かになるし、医学にフィードバックして、いい医者になる。医師としての内容を豊かにするものがあれば、いい医者になれるよ。
(つづく)
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